学校コンサルタント奥田雄一郎がこっそり教える「選ばれる学校」になるためのヒント

コアネット教育総合研究所プロジェクトリーダー奥田のブログです。テーマは主に、教育や学校経営、Web、ICTなど。

次年度に活きる!募集活動振り返り「4つのポイント」(中高向け)

こんにちは!コアネット教育総合研究所奥田です。

まだまだ入試中の学校も多いですが、すでに次年度募集の準備も始めなければ
いけない時期になってきているかと思います。

仕事とは言え、まさに「息つく暇ない」日々を送っておられる
広報担当者の教職員の方々。本当にお疲れ様でございます・・・

パンフレットの制作や、広報予算の詰め、説明会の日程決め、
各種アンケート対応など、これからの時期にやるべきことは盛りだくさん。

ともすれば、十分な振り返りもないまま、次年度の計画・準備を
進めてしまいがちになる
のもむべなるかな、といったところです。


しかし、どの学校も「忙しい時期」だからこそ、ここで
しっかりと振り返りをして、効果的な計画を立てられるかどうかが、
次年度募集の成否を分けるといっても過言ではありません。

そこで今回は、次年度募集の改善につながる「4つの振り返り手法」
ご紹介します。少しでもお役立ていただければ幸いです。


1.来校者アンケートを整理する

 説明会などでアンケートをとっても、とりっぱなしになっていたり、
 各回の集計しかしていなかったりしているのは、もったいない!

 例えば「自校を知ったきっかけは何ですか?」という質問への回答を
 集計すれば、次年度の広告出稿やWebサイトへの予算配分などを
 考える上で、有用な情報が得られるでしょう。

 なお、そもそもアンケート情報の入力すらしていないという場合は、
 外部業者に委託して一気に入力するのも一つの手だと思います。


2.来校者や出願者のデータを分析する

 地域や塾、来校回数、性別、来校履歴、得点、合否、入学有無など、
 属性や行動の違いに着目してデータを整理し、それらを組み合わせて
 集計してみましょう。(クロス集計、と言います)

 例えば、来校履歴と得点のクロス集計をすることで「高得点の受験生が、
 どの説明会に参加していたか」といったことが分かります。


3.非入学者へのアンケートを実施する

 「来校したけど出願しなかった」「合格したけど入学しなかった」

 上記のように、自校と何らかの接触があったにも関わらず
 最終的に入学に行き着かなかった受験生(不合格者を除く)を、
 私たちは「非入学者」と呼んでいます。

 非入学者が「なぜ、自校を選ばなかったのか」を明らかにするのは
 募集活動を改善していく上で、非常に有効な手段のひとつです。

 具体的な調査手法については、コアネットのWebサイトでも
 紹介しておりますので、よろしければご参照ください。

 (ご参照)入学者・非入学者アンケート
  http://www.core-net.net/service/ma/enquete


4.入学者やその保護者にインタビューする

 シンプルですが、効果絶大な方法です。

 ポイントは、貴校として「今後増やしていきたい層」に近い属性の
 方を対象とすること。例えば、より学力の高い層を増やしたければ、
 入試で高得点だった入学者・保護者に声をかけると良いでしょう。

 また、漠然とインタビューするのではなく、実際の学校案内や
 Webサイト、説明会資料、広告などを見せ、学校選択のプロセスを
 追体験してもらいながら、話を伺っていくのが効果的です。


以上、4つの振り返り手法をご紹介しましたが、
これらに共通するポイントは「受験生の声を重視する」ということ。

それ無しでいくら議論を重ねたとしても、効果的な改善には
ほとんどつながらないので、ご注意を(^^;


それではまた!

ICTは教職員の研修も変える(のか?)という話

こんにちは!コアネット教育総合研究所奥田です。

12月6日、インテルと日本マイクロソフト、ピアソン・ジャパンの3社が、
教員研修のコンテンツの充実や利便性の向上を目的とした連携の枠組み
「21世紀型スキル育成支援連携」の協働運営に合意したと発表しました。


21 世紀型スキル育成を支援する 21CS support alliance (21 世紀型スキル育成支援連携) | 教育 ICT - 教育機関の皆様へ

例えばインテルは既に、教員向けのオンライン講座などを無料で
公開しているのですが、こういったコンテンツやそれらの実践事例を
集約したプラットフォームは、ありませんでした。

それを作ることで
「21世紀型スキルの重要性と、それを育成するための方法論を広めよう!」
「そして(いずれは)3社の関連商品をたくさん買ってもらおう!!」
というのが今回の連携趣旨だとお見受けします。(注:個人的見解です)


さてさて、このニュースを聞いて、私の頭の中に浮かんだのが
「いよいよ、教職員研修の世界にもオンライン学習の波が来るな」
ということでした。

もちろん、放送大学では早くから教育関係のオンライン講座
充実させていますし、最近では、東大が「双方向型授業」に関する
オンライン講座
を配信した(している)のも記憶に新しいところ。

したがって、既にポツポツと「オンライン×教員研修」の波は
来ていたわけですが、上述したプラットフォームが作られることで、
その動きはますます加速していくように思います。


では、「オンライン×教員研修」の動きが加速することで、
何が起こるのか。学校として、どんな対応をすべきなのか。

そのあたりのことを考えるにあたり、下の図をつくってみました。
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横軸に「オンライン/オフライン」、縦軸に「オープン/クローズド」
をとり、主な研修形態をプロットしています。


この図に沿って見ていくと、従来は右側の2象限だけで
行われていた教職員研修は、今や左上「オンライン×オープン」
の領域に拡大しつつ
あると言えます。

また、これは私の予測ですが、現状はあまり実践事例のない
左下「オンライン×クローズド」の領域も、近い将来開拓されてい
だろうと考えています。

そこで以下では、左上と左下それぞれの象限について、
もう少し詳しく考察してみます。



まず左上の象限ですが、この領域における研修ラインナップが
急速に充実してきているのは先述したとおりです。

今は「意識の高い一部の教職員」が、個人として各種講座を
活用している場合が多いものの、今後は、学校全体として
どう取り組むかを考えるべき段階
に移行するでしょう。


具体的には、自校の教員育成方針・計画(そもそもこれらが
曖昧な場合は、まず策定する必要がありますが)に基づき、

・何を目的にして
・どの教員に
・どのオンライン講座を
・どんなタイミングで受講させ
・どのように効果測定をするのか

といったことを計画し、組織的に実行していくことが
必要になってきます。


また、例えば「オンライン講座でインプットしたテーマに
ついて、校内研修で議論する」といった反転授業形式の研修も、
ぜひ検討していただきたいと思います。

校内研修は、忙しい教職員の方々の時間を割いて行うものですから、
その貴重な時間のほとんどを一方的な講演(インプット)だけに
充てるのは、あまりにもったいない!


これと同じことは、対面での外部研修にも言えます。

実は、私が所属するコアネットでも、今年から反転授業形式の
講座
を一部でスタートしています。

どの外部研修を受けるか(受けさせるか)を検討する際、
それが反転授業形式かどうかが、選択理由のひとつになる日も
近いのではないでしょうか。



一方、左下の象限も、未開拓ながら今後の発展が期待される領域です。

例えば、教員間の相互授業見学の一部を、オンライン化
してみてはどうでしょうか?

先生方の授業を撮影し、それを校内LANにアップ。
互いに見合って感想をコメントし合う、というやり方です。

通常の相互授業見学だと、授業時間が重なっている教員同士は
お互いの授業を見学できません(もしくは時間調整が必要)が、
この方法であれば、その問題は解消できるのではないでしょうか。


以上、教員研修の現状と今後について考察してみました。

オンラインの教職員研修は、時間と場所の制約なく受講できるため
忙しい教職員の方にも比較的受けさせやすいというメリットがあり、
今後ますます普及していくでしょう。

他方、対面講座にも、時間と場所の制約があるからこそ
集中して取り組める、双方向性が高い、といったメリットがあります。

オンラインとオフライン、それぞれの特性を活かした柔軟な
研修設計により、教員育成の効果を最大化していくことが重要です。


私も新たな時代の教職員研修のあり方を、引き続き考え続けます。

ディスカッション・パートナーは随時募集中ですので、
ご興味ある方は、お気軽にお声がけください(^^)


それではまた!

「女子高生のホンネ」が大学広報の常識を覆す!?

こんにちは!コアネット教育総合研究所奥田です。

ちょっと(かなり?)時間がたってしまいましたが、今回は
11月9日に行ったワークショップについて、ご紹介させてください!

このワークは、中高生・大学生マーケティング事業ティーンズ・リサーチ」の
一環として行われました。(ちなみに私が事業責任者を務めています)


タイトルの通り、今回のワーク参加者は8人の女子高校生。
首都圏の中高一貫校に通う、高1・高2の生徒さん達です。

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ユーザー(=高校生)自身に課題発見プロセスに参画してもらうことで、
大人の思い込みを廃して「より本質的な課題」に迫ろう!
という趣旨の本企画。

今回は、首都圏13大学のパンフレットの評価・改善提案に
チャレンジしてもらいました!


前半では「魅力的なパンフレット」とは何かを話し合い、
後半では「魅力的でないパンフレット」に対する改善提案を検討。

「初対面で、特別な訓練を受けていない高校生に、そんなこと
させて意味あるの?」と訝る向きもありましょうが・・・

実際にやってみると、出てくる発言や示唆が、それはもう興味深いのなんの!
参考までに、参加者の発言の一部をご紹介しますと・・・


「なんで入試制度が(募集要項にしか)書いてないの?
パンフの『最初』に書いておいてほしい。
私が受けられない学部の情報なんて、見ても意味ないから!」

「在学生の出身高校、多い順に並べられても『だから何?』って感じ。
むしろ意外性がほしいよね。『この高校からも入学してるの!?』みたいな」

スポーツの実績って載せる意味あるの?
私たち大学には勉強しにいくんですケド・・・」


いやーもう、評価対象としたパンフレットの制作関係者の方々には
気の毒としか言いようのない、散々な言われようだったわけですが、
まぎれもなくこれらも「ユーザーのホンネ」の一部ではあるわけですね(^^;

大人の「当たり前」にとらわれない彼女たちの発想はすごいと
と私たちも改めて実感した次第です・・・


またそれと同時に、自分たちの「ホンネ」の数々から
インサイトを抽出していく過程には、やはりある程度の手助けが必要
だということも、今回のワークを通じて再認識。

つまり、中高生・大学生のユーザー視点と
私たちの思考・対話の技法が合わされば、鬼に金棒!

中高生・大学生をターゲットとしたマーケティングはお任せあれ!!

・・・そんな宣伝でした(笑)


参考までに、今回のワークで得られた主な示唆を、以下に載せておきます。
より詳しく知りたい方は、奥田までご連絡くださいませ(^^)


◆◆女子高生が魅力を感じる大学案内パンフの特長6選◆◆

1.検索性が高く、自分に関係ある情報だけを効率的に見られる

2.情報量が多く、整理されている

3.学部・学科別に、あらゆる情報が集約されている

4.具体的な事実を通じて、親近感を得られる

5.気づき、発見、驚きがある

6.入学後のストーリーを具体的にイメージできる


それではまた!

【教育ニュース】Windowsクラスルーム圏域包括プログラム

こんにちは!コアネット教育総合研究所奥田です。


タイトルの件について、少し前の話題で恐縮ですが・・・

61社が教育ICTを支援「Windowsクラスルーム圏域包括プログラム」発表 リセマム
http://resemom.jp/article/2014/10/28/21128.html


マイクロソフトインテルなど61社で構成する「Windowsクラスルーム協議会」が
Windowsクラスルーム圏域包括プログラム」を発表しました。

同プログラムでは、同じエリアで同種の教育ICT環境整備を行う予定の
複数教育委員会がまとまることで、ICT機器を特別価格で提供するとのこと。

これで、公立小中高へのICT機器の導入スピードがさらに高まるでしょう。


一方、私立小中高においては、経営が各校に委ねられており、上記のような
スケールメリットも享受しにくいため、ICT機器の導入スピードは、各校でまちまちです。

したがって地域によっては、私学よりも公立校の方がICT機器の導入・活用が
進んでいる、という状況が出てきます。というか、既に出てきています。

この点を、私学関係者は、もっと深刻に捉えたほうがよいと思うのです!


ICT機器の導入に慎重な私学の方からはよく

「ICT機器を導入しさえすれば、教育効果が高まるわけではない」

というお話を伺います。それはまったくその通りだと、私も思います。


ただし、自校がどうあれ、新たなツールを使って魅力的な教育活動を実践し、
躍進している学校が一定数あり、今後も増えていくことは確かです。

とりわけ公立校は、ただでさえ費用面のアドバンテージがあるわけですから、
ICT導入を通じて教育の魅力が増せば、それは私学経営上の大いなる脅威です。

独自の経営判断ができる私学の特性を活かし、必要に応じたICT投資と、
それと連動した教育活動のバージョンアップをしていくべきだと考えます。

(より詳しくは私学マネジメント協会の会員誌に「デジタルテクノロジーが変える
学校の未来」という表題で書いたので、会員校の方はそちらもご参照のこと)


それではまた!

偏差値帯別に見る、私立中高一貫校改革のポイント【第2回:偏差値30台編その2】

こんにちは!コアネット教育総合研究所奥田です。


学校改革のポイントを「偏差値帯別(※)」に論じてみよう!
という趣旨で始まったシリーズ記事。今回はその第2回です。


今回も、前回に引き続き「偏差値30台」の学校について。


前回の記事を簡単に振り返りますと、


1.偏差値30台の私立中高一貫校は意外に多い。
 (東京都では、私立中高一貫校全体の約半数)


2.一方、偏差値30台の受験生はそれほど多くないので、
  同偏差値帯の中高一貫校の多くは生徒募集に苦しんでいる。


3.上記の状況から脱却するには、以下3点の再構築が必要。
   ・魅力的な教育ビジョン
   ・効果的な学力向上の仕組み
   ・時代のニーズを捉えた特色教育


といった主張をさせていただきました。
(前回記事の本文はこちらからご参照いただけます!)


第2回となる今回は、上記4で挙げたポイントの1つ目、
「魅力的な教育ビジョン」について論じていきます。


「魅力的な教育ビジョン」が、なぜ重要なのか?

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まず語の定義をします。ここで言う教育ビジョンとは
「育てたい人間像と、それを実現するための教育活動の指針」です。


「え?それってただの『言葉』でしょ?」


そんな風に思われた学校関係者の方は要注意!
それは「受験生保護者の本質的ニーズ」を浅く読みすぎています。


決して安くはない6年間の教育費用や、受験のための塾代、
さらには我が子の貴重な時間(受験勉強に1~5年間+中高6年間)を
費やしてまで、中学受験生の保護者が私立中高に求めるものは何なのか。


それは第一義には
「中高卒業後、我が子が幸せな人生を歩んでいけること」
なのではないでしょうか。


そして、ご家庭によっても、個々の子どものタイプによっても、
「何が幸せか」「それを得るために、どんな人間に育ってほしいか」
といった点に対する考え方は異なります。


そのため、これらの考え方と各校の「育てたい人間像」
合っているか、それを実現するための「教育活動の指針」が妥当か、
といった点が、受験生保護者にとって重大な関心事となるのです。


もちろん、既に一定の評価を得ている学校であれば、
教育ビジョンが抽象的だったり、一見、時代に即していなかったりしても
保護者の側で「勝手に」好意的な解釈をしてくれる場合もあります。


しかし、偏差値30台の学校の場合、そうはいきません・・・


「建学の精神」や「校訓」を抽象的な言葉で説明するだけでは、
残念ながら、魅力を感じてもらいづらい。


だからこそそれらを、受験生保護者にとっても魅力的な
「教育ビジョン」として再構築することが重要なのです。


三田国際学園の事例

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さて、生徒募集における教育ビジョンの重要性を確認したところで、
続いては「魅力的な教育ビジョンとは何か」という点について、
実際の学校の事例に沿って考えていきましょう。


前回予告した通り、事例として取り上げるのは三田国際学園中高
戸板女子中高が、2015年に共学化・校名変更して出来る学校です。


同校がスローガンとして掲げるのが
「創造と発想を教育の柱にする」という言葉。


私なりに解釈すると、この言葉は

「創造力・発想力に秀でた人を育てるために
 それらを育むことを重視した教育活動を行う」

というように変換できます。


多くの中高一貫校が受験対策や進学実績を重視する中、
「創造と発想」という一見それらから遠そうな力を
「教育の柱にする」と言い切っているところがユニーク
です。


(大学入試改革の議論の流れを見ると、むしろ今後は
大学入試でも「創造と発想」の力が必要になってくる
でしょうから、その潮流を先取りしているとも言えます)



さらに同校は、新しい校名そのものにも、私が言うところの
「教育ビジョン」的な役割を担わせています。


校名の前半「三田」は、かつて校舎があった地域の名前であり、
転じて同校の建学の精神に由来するそうです。
一方、後半の「国際」は、グローバル社会に由来するとのこと。


また同校のWebサイトでは「校名にかける思い」という
文章が掲載されています。その一部を引用すると・・・


”112年続く建学の精神を受け継いで、
『時代に適応した実学』を提供する場であり続けるために、
私たちはグローバル時代に生きる子供たちを育てる学校として
新たなスタートを切ります。”


つまり、新たな方針であるグローバル社会に対応した教育もまた
『時代に適応した実学』、即ち建学の精神から導き出される
ものだと言うことです。


そしてグローバル社会に対応できる力のうち、特に重要だと
同校が考えるのが「創造と発想」だということなのでしょう。


魅力的な教育ビジョンづくり「3つのポイント」

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さて、このような同校の事例を「魅力的な教育ビジョンづくり」
という視点で捉えると、以下3つのポイントが見えてきます。


1.建学の精神を受け継ぐ
2.独自の将来観から逆算する
3.自校の強みを活かす


まず1により、受験生保護者に「一貫性・継続性」という
価値を訴求することができます。


いくら先進的な教育活動を行っている学校であっても、
その内容が場当たり的に変わってしまうようでは、
受験生保護者の信頼は得られません。


特に積極的に改革に取り組んでいる変化の速い学校こそ
この点を重視した教育ビジョンになっているかどうかが
成否の分かれ目となります。


したがって、まさに大改革を実行中の三田国際さんの
教育ビジョンが建学の精神と密接にリンクしているのは、
生徒募集の面でも理にかなっていると言えます。



次に2の「独自の将来観」について、変化が激しく
将来が不透明な昨今において、


・予測しうる未来のうち、重要な変化は何かを明示し
・それに対応した教育ビジョンを提示する


ことは、受験生保護者の不安の払拭につながります。


換言すれば、受験生保護者は、我が子が生きていく
「将来」がどのようなものであるか、という点について、
共感できる(説得力のある)考えを提示する学校に対し
魅力を感じる、ということです。


三田国際さんは、この点を明確に意識し、教育ビジョンに
取り込んでいらっしゃるように感じます。


将来子どもたちが生きるのは「グローバル社会」であり
そこで重視されるのが「創造と発想」の力だという主張は
シンプルで分かりやすく、説得力があります。



最後に3の「自校の強み」について。


これは受験生・保護者に対し、競合校には提供できない
独自の価値をもたらすことができるか
、という視点です。


これは教育ビジョンというより、教育内容面のことだと
思われるかも知れません。


しかし実際には、やはり教育ビジョンの段階から、
この点を意識しておく必要があると、私は考えます。


例えば三田国際さんは、グローバル社会で生きていく
ために特に重要なのは「創造と発想」の力だと訴えていますが、
これがもし「語学力」だったら、どうでしょうか?


「それはそうだけど、当たり前だよね」
「そういうことを言っている学校は、他にもあるよな」


などと、感じてしまうのではないでしょうか。


実際には三田国際さんも、教育内容のレベルにおいては、
他校と同様かそれ以上に語学教育に力を入れています。


しかし、前面に出したのは「創造と発想」でした。


もちろん「創造」「発想」というキーワードを前面に
出している学校は他にもありますが、それをグローバル化
と結びつけて出しているところがユニーク
です。


そして、こういった独自性を教育ビジョンに組み込むのは、
受験生・保護者に注目してもらうために重要なことです。


「自校の強み(=独自性)」で興味をひき、
「建学の精神」でその一貫性を、
「独自の将来観」でその有効性を訴求する。


この基本構造は、魅力的な教育ビジョンをつくり、
そして伝えていく上で非常に大切な枠組みですので、
ぜひ覚えておいていただければと思います。



以上、またもや長くなってしまいましたが、このあたりで
「偏差値帯別に見る、私立中高一貫校改革のポイント」の
第2回を終わらせていただきます。


次回は、偏差値30台の学校の改革ポイントその2として
「効果的な学力向上の仕組み」をご紹介します。


それではまた!



※本稿で取り扱っている「偏差値」についての補足です。

<補足1>
今回取り扱う「偏差値」は、中学受験のもの。
幅広い層が受験する「日能研模試」の合格80%予想偏差値です。


<補足2>
一般に、中学受験の偏差値は、同じ学校であれば、
高校受験に比べ15~25ほど低く付く、と言われています。
したがって中学受験で「30台」の学校でも、高校受験では
「50台」あるいは「60台」ということも、よくあります。

<補足3>
入試回によって偏差値が異なる学校の関係者の方は、
最も低い回についての記述をご参考ください。

偏差値帯別に見る、私立中高一貫校改革のポイント【第1回:偏差値30台編】

こんにちは!コアネット教育総合研究所奥田です。


今回から始まるシリーズ記事は、学校改革のポイントを
「偏差値帯別(※)」に論じてみよう!というのが趣旨です。


「偏差値30台の学校と、50台の学校では、
改革のポイントも違う」
と感じる方は多いでしょう。


しかし、なぜかこれまでこの点にフォーカスした論考は
ありませんでした。(私の知る限り、ですが)


なければ自分で書いてしまえ!というわけで、本シリーズの
執筆に至りました。完全に勢い任せですみません(^^;


何はともあれ、シリーズ第1回(一応、全4回を予定)となる今回は、
偏差値30台の学校について。


まず「知っている人は知っている」けれど
「知らない人には衝撃の」事実から申し上げましょう。


衝撃の事実!?東京都の私立中学の約半数が「偏差値30台」


東京都の私立中学の約半数は、偏差値30台。
これは各校を、初回入試(帰国生入試を除く)の
合格80%予想偏差値で分類した場合の割合です。


一方、偏差値30台のお子さんは、中学受験生全体の
10~20%程度を占めると言われています。


つまり、単純化して言ってしまえば、
「マーケット全体の10~20%を、約半数のプレイヤーが奪い合う」
状況だということ。


これは、競争過多の典型的なレッドオーシャンです。


もちろん、こういった状況は地域によっても変わってきます。
例えば神奈川では、偏差値30台の中学は約3割です。


また、そもそも偏差値30台のお子さんが必ずしも同偏差値帯の
学校を受けるとは限りません。逆もまた然りです。


ただ、敢えて大きく捉えるとするならば、
「偏差値30台の私立中学は、生徒募集上、
極めて厳しい状況にある」
と言えます。


実際に、ご相談を受けたり見聞きしたりしていても、
生徒募集に苦しむ偏差値30台の学校は、非常に多い。


そこで以降は、偏差値30台の学校が、生徒募集上の課題を
クリアするにはどのような改革を成すべきか?という視点で
論じていきます。


偏差値30台の学校は「三兎を追う」べし


結論から言うと、偏差値30台の学校からそのポジションから
浮上するには、下記3点を(再)構築する必要があります。


1.魅力的な教育ビジョン
2.効果的な学力向上の仕組み
3.時代のニーズを捉えた特色教育


偏差値30台の学校は、多くの受験生・保護者から
「ターゲット外」と認識されてしまいがちですから、
相当な変化がなければ、知ってもらうことすら出来ません。


そこで、入試や広報の改革(これらも重要ですが)だけでなく
上記のような「学校の根幹」に踏み込んだ改革が必要となるのです。


では、1~3それぞれを具体的に論じていきましょう
・・・といったところで、今回も少々長くなってきてしまいました。


前回記事で「Webは文字過多NG」と言っておきながら、
自分の記事が長いのですから、これはもうお恥ずかしい限り。。


そんなわけで、上記3点の具体的な説明は次回に回しますが、
少々予告だけさせてください!


予告:次回は三田国際学園の改革事例を取り上げます!


以降の記事では、実際の学校の事例を交えながら、
偏差値帯別の学校改革ポイントを、紹介していきます。


偏差値30台の学校の改革事例として取り上げるのは
三田国際学園中学校・高等学校」さん。


用賀にある戸板中学校・戸板女子高等学校さんが、2015年より
校名変更・共学化して、「三田国際」さんになる予定です。


校名変更・共学化だけでも大きな変化ですが、
カリキュラムや授業スタイルなど、多岐にわたる改革を
同時並行で進めることを宣言されています。


まさに「改革中」の同校において、募集上の成果を
確認するには来春の入試を待たねばなりませんが、
模試動向などを見ても、受験生・保護者の注目度が
急速に高まってきているのは明らか。


そこで、少々フライング気味ではありますが、同校を
改革の「成功事例」として取り上げさせていただきます。


おそらく史上最速(?)の三田国際学園ケーススタディ
ご期待いただければ幸いです。


それではまた!



※本稿で取り扱っている「偏差値」についての補足です。


<補足1>
今回取り扱う「偏差値」は、中学受験のもの。
それも中上位層が受験すると言われている「日能研模試」の
合格80%予想偏差値、だとイメージしておいてください。


<補足2>
一般に、中学受験の偏差値は、同じ学校であれば、
高校受験に比べ15~25ほど低く付く、と言われています。
したがって中学受験で「30台」の学校でも、高校受験では
「50台」あるいは「60台」ということも、よくあります。


<補足3>
入試回によって偏差値が異なる学校の関係者の方は、
最も低い回についての記述をご参考ください。

こんな学校サイトは嫌だ!学校サイトづくりで陥りがちな【7つの落とし穴】(後編)

こんにちは!コアネット教育総合研究所奥田です。


2回シリーズで、学校サイトづくりについて書いています。
今回は「後編」ですが、「前編」では以下の3つの「落とし穴」をご紹介しました。


1.文字ばかりで写真や図表が少ない
2.掲載されている情報のほとんどが紙の学校案内と同じ
3.知りたい情報にたどりつきにくい


どれも「言われてみれば…」「わかっちゃいるけど…」
といったポイントではないでしょうか。


今回も実は、最新の技術やコンセプトに関することは書きません。


まずは何より「基本」が大事。
ご紹介する「落とし穴」をしっかり埋めた上で、さらなる高みを目指しましょう!


それではさっそく、4つ目の「落とし穴」から紹介していきます。


4.なにが特色なのか分かりづらい


学校サイトの特徴として、紙の学校案内に比べ、
情報がフラットになりがちだという点が挙げられます。


紙の学校案内では、初めのほうのページに
特に伝えたい情報を持ってくることができますが
ウェブサイトだと構造上それはやりづらい。


かといって、完全にカテゴリ化された情報を
整然と配置しているだけでは
「結局、この学校の特色はなんなの?」となる。


では、どうすればよいのか。


例えば、トップページで「本校の3つの特色」といった
ページへのリンクを目出つように貼るのも
少しは効果的でしょう。


けれど、ウェブユーザーの基本的な行動原理は
「自分が知りたい情報を自由に探す」というものです。


いくら「オススメ」されても、それが
自分の知りたい情報でなければスルーされる
可能性は極めて高い。


そこで、私が推奨しているのが
ユーザーが知りたい情報が載っているページの下に
『関連リンク+一言説明』をつける

という工夫です。


例えば進学実績ページを見ているユーザーに対して
国際教育について訴求したければ


「本校は国際系大学・学部への進学が多い」
「それは充実した国際教育の結果」


といった説明を添えて
国際教育ページへのリンクを貼る。


ユーザーが知りたい情報から、
学校として伝えたい情報へ。

ページ間の「文脈づくり」が大切です。


5.スマホだと見づらい


今やスマホタブレットで情報するのが当たり前。
それは学校サイトとて例外ではありません。


実際に私がご支援しているA校さんでは
スマホタブレットからの訪問数が
ついにPCからのそれを超えました・・・!


地域や学校種の違いこそあれ、
他の学校でも似たような状況が起こっています。


要は、変化スピードが早いか遅いかだけの違いだと思います。


そんなわけで、こんなご時世に自校サイトが
スマホ対応していないのは、実にもったいない・・・!


見づらいだけでなく、例えば一時期流行った「Flash動画」など
そもそも一部の機種からだと
「見られない」コンテンツすらあるんです。


たんにスマホ対応をしていないだけで
場合によっては半分以上の訪問者に悪い印象を与えてしまうのは
悲劇でしかありませんよね。。。


けれど、これは防げる悲劇。
まだの場合は、早急に対応してくださいね(^^)


6.受験生・保護者向けのイベント情報が日程順になっていない


細かっ!我ながら細かいのですが「神は細部に宿る」とも言います。
以下、詳しく説明していきましょう。


イベント情報が日程順に掲載されていない場合
ほぼ100%「ジャンル別」になっていると言ってよいかと思います。


つまり「学校説明会」や「オープンスクール」というように
内容の違いに注目して分けられているわけです。


「いやいや、いいでしょ、それ。十分にわかりやすい」


という声も聞こえてきそうです。


でも、やっぱりこれは「落とし穴」なんです。なぜか。


それは、初めてそのサイトを訪れた受験生・保護者の
気持ちになってみれば分かります。


例えば、イベント情報のページの最初に
「学校説明会」の日程が載っていれば
そこだけ見て、自分の予定を確認する人もいるでしょう。


もしその下に「オープンスクール」など
別のイベントの日程が掲載されていたとしても
気づかれない可能性があるわけです。


そんなわけで、私がオススメしているのは
イベント日程一覧をページの一番上に載せること。


そこからリンクで飛んで、詳しい情報を見せればよいわけです。


ちょっとした改善ですので
該当する学校の方はぜひ検討してみてください!


7.「更新されてる感」が薄い


学校サイトにおいて「更新頻度を上げること」は大切です。


受験生・保護者であれば
在校生の日々の様子や入試の最新情報などを目当てに
気になっている学校のサイトを何度も見に来ます。


多くの学校様もそこは分かっていて
ブログやトップページの新着情報は
マメに更新されている場合が多い。


けれど、どんなに頑張って更新しても、それが
訪問した人に伝わっていなければ意味がありません。


例えばブログ。新しい記事を上げても、
それがトップページ上で目立つように「告知」されないと
あまり気づいてもらえないわけです。


これもまた、悲劇・・・!


では、こういった「労多くして利少なし」的な状況を
回避するためには、どうすべきか。


ズバリ!「更新感」を上げればよいのです。


例えばブログを更新すると、その情報が、
記事中の写真と一緒にトップページに
載るような仕組みを導入するのも一つの手です。


さらに、こうやって「更新感」を上げる工夫をすることは
更新情報に気づいてもらうというだけでなく
「学校の勢い」を感じてもらうことにも繋がります。


逆に言えば、「更新感」が薄い学校は、
伝えられることが少ない学校だと思われてしまう。


もっと言えば
「教育活動が充実していない学校」
だと思われてしまう可能性さえあるので、要注意です!


ちなみに、定期的にトップページのメイン画像を変えるのも
「更新感」を伝えるためには有効な手法です。


メイン画像に写真を使っている学校様であれば、
季節ごと、あるいは大きな行事ごとに
それを変えてみるのもよいでしょう。


最近は、校内でトップ画像を更新できる仕組みを
導入している学校様も増えてきています。


一度、制作担当者と相談してみてはいかがでしょうか。



以上、2回シリーズにて、学校サイト改善のヒントをお伝えしました。
参考になる点がありましたら幸いです。


質問や、もっと詳しく聞きたいことなどありましたら
こちらからお問合せください。


それではまた!